続・仁義なき野球拳

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「いやっ、げーむするの」 「いやっ、あにめみるの」  三歳になる双子の波蘭と万丈はそれぞれオレと妻の趣味に洗脳されている。  ゲーム好きの姉の波瀾、アニメ好きの弟万丈、どちらも可愛く妻とともに大事に育ててきたのだが、ここ最近の悩みごとは風呂に入りたがらないことである。  手を変え品を変えお風呂に誘うのだが、最近はふたり揃って入りたくないという。 「パパも一緒にげーむやろうよ」 「お風呂に入ったらやろうな」 「いまやりたぁい」  妻に似た甘え声に気持ちが揺らぐ、が、ゲーム機から目をそらさずに言うのにはカチンときた。 「よぅし、それならパパとジャンケンして勝ったらゲームをしよう。負けたらお風呂な」  波瀾はゲームというか勝負ごとに目がない。少々将来が心配だが、今はそれを利用させてもらう。  案の定、ゲームを止めてこちらを向いた。 「いくぞ、さーいしょはグー、じゃーんけーんポン」 波瀾はパー、オレはチョキでオレの勝ち。 「さ、お風呂に入るぞ。バンザイして」 上着を脱がすと、波瀾がジャンケンをしかけてきた。 「さーいしょはぐー、じゃーんけーんぽん」 波瀾はグー、オレはチョキでオレの負け。 「これでなしね」 イーブンに持ち込んだからお風呂に入らないと言いたいらしい。 ふっ あまいな、わが娘よ。オレはすぐさま上着を脱いだ。 「パパも脱いだから無しじゃないよ。さあお風呂に……」 「さーいしょはぐー、じゃーんけーんぽん」 波瀾はチョキ、オレはグー。 甘い甘いわが娘よ、その手はパパがよくやるのだ。  よほど悔しかったのか波瀾はシャツを脱ぎ、対峙する。 休日の夜、なぜか父と娘で野球拳がはじまった……。
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