夜明けまで

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私が高校に上がる頃には、今度は鬼が帰ってこなくなった。外に女が出来たらしい。 やっと、おばあと私の生活に平穏な暮らしが戻ると思っていたら、おばあの娘は今度は私への折檻をエスカレートさせていった。 テストで満点を取れなかったと言って、一晩中雨の中で外に出された。 ある時は、同級生のお母さんに余計な事を言ったと決めつけられて、血が出るまでつねられたりした。 それでも子どもというのは、無力だ。 両親が鬼でも鬼の嫁でも、私には守るべき大切なおばあがいた。 おばあに危害がおよばないなら、折檻なんて平気だった。 私のおばあは、人を憎む事を善しとしない穏やかな人だった。 「学が無い」と娘に蔑まれる、読み書きも出来ない農家の娘だったが、9人の弟妹(ていまい)の世話や農作業を黙々とこなして彼らを育てあげ、その(のち)見合いで決まったおじいに嫁いだ。 おばあは子どもに恵まれず、娘である母は、おじいが外で作ってきた子どもだったと亡くなった後知ったけれど、とても愛情をかけて育てていたと思う。 不満など聞いた事が無かったもの。 おばあの手は、ごつごつとして荒れた働き者の手をしていた。けれど、とってもあったかかった。 そんなおばあがいたから、私は生きてこられた。
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