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 浅い眠りを繰り返すようになっていた。  ハッとして飛び上がると、間宮は自分が汗まみれであることに気がついた。強烈な異臭。汗を掻いただけのはずなのに、吹き出た汗は遠い昔に封じ込めた忘れたくて仕方のないアレの臭い。 「死臭だ……」  吐き気が込み上げ、シャワー室へと駆け込んだ。ボタンを押すと直ちに優しい雨のようなシャワーが注がれる。普段はこれでいいが、今求めているのはこれじゃない。もっと叩きつける水圧で臭いを流したい。ボタンを連打するがオン・オフしかない為、なんの解決にもならなかった。 「クソ!」  蘇る死臭。マコの体は時間の経過と共に肥大し、膨れ上がっていった。死ぬとガスが発生し、猛烈な臭いと醜さを放っていった。 「有り金はたいてやり直したんだぞ! なんでこんな悪夢を見なきゃならないんだ」  シャワー室の壁を殴ると、間宮の拳が切れて出血した。 「痛っ。夢じゃないだと? なら、ここのシステムがいかれたのか」  間宮が騒ぎ立てているとシャワー室の外に人影が現れ言う。 「壊れているのはあなたなのよ。ずっと昔からね。私の死亡報告書を見たわ。暴漢に襲われたなんて、デタラメ過ぎて笑っちゃうわね。それと私のSNSの裏アカも見つけたの。あなたは辿れなかったかもしれないけど、直ぐに見つけられたのよ」  マコがシャワー室の向こう側に来ていた。 「見届けてあげるわ。死ぬまで一緒なんでしょ? 夫婦だから」  マコの声音は至って冷静で、まるで歌でも謳っているかのように淀みなく清らかだ。  死臭で頭がガンガンと痛む。吐き気も収まらず、目眩がしていた。 「人を呼べ! 救急室へ運んでくれ!」  胸を抑えながらへたり込む間宮に、シャワーの温い湯が降り注ぐ。 「二酸化炭素の気中濃度3%。ゆっくりゆっくり死んで頂戴。時間は気にならないのよ、今の私は」  マコの言葉に驚き、這いつくばってドアノブを掴んだが、まるで開く気配がない。 「私は変わったのよ。この建物と一体化しているから、システムを弄ることも出来るの。変わった変わったと言うあなたは、なんにも変わってなかったけどね」  ぽんとシャワー室のガラス戸が透明に切り替わり、マコの姿が現れた。見たこともないほど残酷な笑みを浮かべて、間宮を見下ろしていた。 「見届けてあげるわ。夫婦ですもの」 終
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