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「まさか……私を抱きたいって意味?」
憎悪と嫌悪がないまぜになった顔で、信じられないとマコは啞然としていた。唇の端は切れ、血が滲んでいる。
間宮の指は既にマコの服をスカートから引き抜こうとしていた。
「悪かったと思ってる。だからやり直させてくれ」
間宮の口はマコを罵るためにあるわけでなく、愛を囁やくためにあることや、間宮の手はマコを叩くためにあるわけではなく、優しく撫でるためにある。それを証明しなければならなかった。
「冗談でしょ? 私を殴ったその手に抱かれるとでも? そんなの死んだほうがマシ」
嫌悪と憎悪に蔑み。マコは間宮をおぞましいものでもみるように見つめていた。
「悪かったよ。痛かったよな」
頭に血が上ると手が出るのは悪い癖だと理解していた。だが、マコが反抗的な態度をとるから怒るのであって、間宮の意見を尊重してくれたら──。
「明日、病院に行く。診断書を貰ってくるから。意味わかる? 別れるの。あなたとは関わり合いたくない。二度と近づかないで!」
腹部に這わせようとしていた間宮の指を叩き落とすマコ。せっかく謝るつもりだったのに、間宮の怒りは再燃しマコの首を鷲掴みにしていた。
「離婚だと! そんなもの同意するはずないだろ。変な入れ知恵はどこから手に入れた! ネットか、ネットだな。どうして黙って従わない、どうして! 謝れ、謝れよ」
マコの顔がうっ血し、間宮の手を払い除けようとジタバタするが、渾身の力で首を締め付けられて次第に手につかまるだけになった。最後にゴボッと水中で出すような変な息を吐いたあと、マコの力が一気に抜けていった。
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