真冬のヒマワリ

3/11
前へ
/11ページ
次へ
「中さ、入るべ。(さみ)いど」 「さみいども、久しぶりだわ」  ケラケラと笑うその顔は、一気に冷え切った空気を温める。  まるで真冬に咲くヒマワリみたいなエネルギー。  クラスを引っ張ってきたナツの笑顔が、今も健在だったことに少しホッとする。  笑顔だけは変わっていない。  安易な俺はそう解釈し、口元だけで笑い返した時だった。 「よし、したら行くど、ハルちゃん!」 「は?」    次の瞬間、ナツは俺の手を握って勢いよく居酒屋の扉をガラガラッと開ける。 「待たせたな、三年四組!」  右手で俺の手を握り、左手をあげたナツの登場に、座敷に座る元クラスメイトたちは一瞬静まり返ったすぐ後で。 「嘘だべ? ナツだ‼」  えええっ、と悲鳴のような声をあげて、靴も履かずに座敷から飛び出してきたのは加藤優香だった。 「なしてよう、言ってよね? したら空港まで迎えに行ったのに!」 「ごめんって。優香の声聞いたらさ、会いたくなって。皆の顔、見たくなってさ」  泣き笑いしながら抱き合うナツと加藤に俺は端に追いやられる。  周りの女子も男子も、ナツを囲んで七年ぶりの再会を喜んでいた。 「おい、ハル! どこでナツば拾ったのよ? つうか、もしかしてヨリ戻したのか?」  俺の脇腹を突き、おちょくってきた高橋の声に、今度は全員がざわめきだす。 「そういえばさっき手つないでたよね?」 「だよね、やっぱりそうだよね」  その訝しがるような皆の視線に、ブンブンと首を振る。  チラリとナツを見たら、またニヤリと猫みたいに目を細めて。 「ええ? 見られてた? 皆のご想像にお任せしよっか」 「おい、否定しろよ‼」  ウフ、なんて小首をかしげて濁すものだから、その後しばし俺とナツの話で盛り上がっていた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

43人が本棚に入れています
本棚に追加