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「中さ、入るべ。寒いど」
「さみいども、久しぶりだわ」
ケラケラと笑うその顔は、一気に冷え切った空気を温める。
まるで真冬に咲くヒマワリみたいなエネルギー。
クラスを引っ張ってきたナツの笑顔が、今も健在だったことに少しホッとする。
笑顔だけは変わっていない。
安易な俺はそう解釈し、口元だけで笑い返した時だった。
「よし、したら行くど、ハルちゃん!」
「は?」
次の瞬間、ナツは俺の手を握って勢いよく居酒屋の扉をガラガラッと開ける。
「待たせたな、三年四組!」
右手で俺の手を握り、左手をあげたナツの登場に、座敷に座る元クラスメイトたちは一瞬静まり返ったすぐ後で。
「嘘だべ? ナツだ‼」
えええっ、と悲鳴のような声をあげて、靴も履かずに座敷から飛び出してきたのは加藤優香だった。
「なしてよう、言ってよね? したら空港まで迎えに行ったのに!」
「ごめんって。優香の声聞いたらさ、会いたくなって。皆の顔、見たくなってさ」
泣き笑いしながら抱き合うナツと加藤に俺は端に追いやられる。
周りの女子も男子も、ナツを囲んで七年ぶりの再会を喜んでいた。
「おい、ハル! どこでナツば拾ったのよ? つうか、もしかしてヨリ戻したのか?」
俺の脇腹を突き、おちょくってきた高橋の声に、今度は全員がざわめきだす。
「そういえばさっき手つないでたよね?」
「だよね、やっぱりそうだよね」
その訝しがるような皆の視線に、ブンブンと首を振る。
チラリとナツを見たら、またニヤリと猫みたいに目を細めて。
「ええ? 見られてた? 皆のご想像にお任せしよっか」
「おい、否定しろよ‼」
ウフ、なんて小首をかしげて濁すものだから、その後しばし俺とナツの話で盛り上がっていた。
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