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「じゃあ、聞くけど。ナツの好きな人って誰よ? 俺のを聞くなら、お前の方から先に教えろよ」
どうせ、言いっこないくせに、とイジワルな返しをしたつもりだったのに。
「え? 私の好きな人? ハルちゃんだけど」
エヘヘと笑ったナツに思考が止まる。
「ハルちゃん?」
立ち止まった俺の目の前にヒラヒラと揺れているナツの手にようやく気付いた瞬間、怒りが湧く。
「からかうなよ」
ナツを置いてきぼりにするように早足で歩き出す俺に。
「なんで? からかうって、なに?」
少し小走りでナツがついてくる。
「適当なこと言うなや!」
「は? 適当?」
「したって、よりにもよって何で俺の名前、」
「待って? え? 本当にからかってなんかないんだけど‼」
いきなりブレザーの裾を引っ張られて止められる。
「ハルちゃんのことが好きだった! ウソじゃない」
振り向いたら真っ赤な顔で俺を見上げているナツがいた。
「だから気になるの。ハルちゃんの好きな子! どんな子がタイプなんだろうって、ずっと」
ずっと……?
「入学してからずっとだよ? 高二で同じクラスになってうれしくて、三年になってもうちょっと近くになりたくて。優香に頼んだの。ハルちゃんと私をクラス委員に推薦してって」
そういうこと? 目立たないように生きてきたはずの俺が、なんでクラス委員に? なんて思ったけれど、そんなカラクリがあったとは……。
「したって、ナツとちゃんと話すようになったのって、三年でクラス委員になってからで」
「や――っぱり! ハルちゃん覚えてないんだ。桜の木の下、入学式の日に」
「毛虫!!」
「そう、毛虫取ってくれたのハルちゃん!! あの時ね、ハルちゃんのこと王子様じゃないかって思ったし」
「大袈裟だろ」
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