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しおりちゃんには、大好きな人がいる。
子供の約束では、珍しいことではないはずだ。
将来お嫁さんにしてあげる、とか。将来結婚しようね、なんて軽い気持ちで友達と約束してしまうというのは。
だから私も当初、娘がそれを言い出した時は同じパターンだと思ったのだ。
「ママ、ママ。あのね、今日幼稚園でね、すてきなことがあったの」
「あら、なあに?」
現在、夫は遠方に主張中。あと一週間は家に戻ってこない。ゆえに、夕食の時間は私と、娘の汐里の二人だけで食べていたのだった。
パパが大好きな汐里が寂しがっていることはわかっている。少しでも娘が元気を出してくれるようにと、今日は彼女が大好きなカレーライスにした。
特に、娘はポークカレーが大好きなのでちょっと高い豚肉を多めに入れている。幼稚園児だが、彼女はバーモンドの中辛くらいは全然食べられるタイプだった。友達より辛いのも平気なの!と笑っていたのは記憶に新しい。
そんな食事をしながら出たのが、例の話だったわけである。
「しおりね、大好きな人に告白されたの!しおりにね、しょうらい、ふうふになりましょうって言ってくれたんだよお!」
「結婚しようってことかな?」
「うん!しおりも、その子が大好きだから、ふうふになりたい!ふうふって、パパとママみたいに一緒になることなんだよね?しおりもそうなりたいー!」
贔屓目が入っているのは否定しないが。現在年長組の汐里は、下手な小学生より語彙が豊富だった。ルビさえ振っていれば、小学校の子供達が読むような児童書も読めるほどである。
あとは、時々“どこで覚えたそんな言葉!?”みたいなことを言うこともあった。多分、読んでいる漫画の影響だろう。名探偵コナンなんかだと、普通に生活するだけでは出てこないような難しい言葉が出てくることも珍しくないのだから。
「それは本当に良かったわね。あ、汐里、カレーほっぺについてるわ」
私は娘の頬をティッシュで拭いながら、それで?と尋ねた。
「誰に愛の告白を受けたの?同じゆり組のお友達?」
「うん!」
そして彼女は、満面の笑みで言ったのだった。
「同じクラスの、さくらこちゃん!」
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