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十話 結果とカラクリ
昼休み、
僕は適度に人気の少ない場所を探した。
結果屋上近くの階段に腰をかけ、スマホの電源をつける。
「どうだった〜?」
アプリを起動するなり、リベルダは呑気にそう聞いてきた。
僕は親指を立ててうまくいったことを伝える。
「めっちゃすごかった!
かなり足早くなったし、あの不良を捲ってやったよ!
あの驚いた顔と、悔しそうに怒ってるあの顔、見せたかったよ。」
僕がクククと笑うと、リベルダは「悪い顔〜」といじってくる。
でも、これを笑わずにいられるだろうか。
今まで散々馬鹿にしてきた不良を、見返すことができたのだ。
キャラの力とはいえ、少しスッキリした気分だ。
「でも、よかった〜
思いつきであんな提案したのはいいけど、実は効力自信なかったんだよね〜」
発案者のリベルダは謙遜しつつも自慢げにそう言う。
そう、さっきの授業で急に足が速くなったのは実力ではない。
例のコスプレのおかげだ。
もちろん、授業で着ていた体操着も学校指定のものだし、
そもそも学校では制服とか、学校指定の格好しかできないので、
全身コスプレなんて出来ない。
でも、穴はある。
「まさか本当に、全身じゃなくても一部…足回りだけでも効果発揮するとはね…」
僕はズボンの裾を少しあげる。
そう、靴下と靴は指定ではない。
だからその部分だけ、陸上部の足の速い漫画のキャラのコスプレをしたのだ。
なるべく効果が出るように、衣装と履き方を最大限真似て。
まぁ、一部真似ただけのことを、コスプレと言っていいかどうかは微妙だけど。
「衣装全部に、魔法がかかってるからね!
魔法とか特殊能力じゃなければ、一部だけでも真似れば能力発揮できるんじゃないかと思って。
本当は腰とかもなんかできればよかったんだけどね〜」
リベルダいわく、より能力を発揮したい場所をコスプレすると能力使えるのではないか、という考察をしているらしい。
リベルダ的には少し残念だったらしいが…
「いや、靴と靴下だけでこの効果だったら、キャラの能力考えても腰もやってたらやりすぎだったよ。」
今回コスプレするために選んだキャラは陸上で、50メートル走でドベだった悔しさをバネに日々訓練をしたというキャラ。
結果誰よりも足が速くなり大会で毎回記録更新するほどの実力者となったそのキャラは。
いつの間にか誰も追いつけないくらい早くなり、観客も目で追うことが出来ないほど足が速くなった。
ライバルは過去の自分、あだ名は『音速』
二次元だから面白いけど、現実でこんなことがあったら、
早すぎて逆にかなり怪しまれただろう。
なんとかギリギリだけど大差つけられた今回くらいのスピードでちょうどよかったのだ。
「ありがとうリベルダ、おかげで一泡吹かせられたよ」
「リレーになんかこだわってたからね!
これで勝てればメンツ丸潰れかなって思って、当たってよかったよ。」
リベルだの方もなんだかんだ思うところがあったらしく、スッキリした様子だった。
さて、これで僕の方は目的達成したわけだけど…僕だけ目的達成しても意味がない。
「リベルダの方はどう?肝心のレベルの方は上がった?」
そうリベルダに質問すると、首を横に振った。
協力したはいいけど、レベルは変わっていない「2」のまま。
そう、一部だけキャラの真似で大丈夫なのかという不安はリベルダの方にもあった。
効果はあっても、レベルが上がらなければ何の意味もない。
自由になるのが遠くなるからだ。
「やっぱ全身コスじゃないとダメそう?」
「うーん、まだそう決めつけるのは早いんじゃないかな?
反映されるまでちょっと時間かかるんだよ、ほらっ!」
リベルダはレベルが表示されている方を指さす。
そこはレベルの表記がされている場所だった。
そっちの方に視線を向けてみると、レベルの数字が少し光っていた。
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