十三話 メガネに秘密はあるけどない。

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十三話 メガネに秘密はあるけどない。

「喪山、お前…頑張ったんだな」 先生は採点を終えると、涙ぐみながらそういった。 返してもらった答案は、当然また100点だ。 「お前の成績のことはずっと心配してたんだ。 よかった、成績が伸びて。」 それを聞いたギャラリーの生徒たちは、僕の再テストの点数を察したんだろう。 またザワザワとし始める。 でも、先ほどと違って「不信感」というよりは、「すごい!」という賞賛の声の方が大きかった。 これで自分のカンニング疑惑が晴れたと安堵していると 「いや、そんなわけねー!絶対なんかカラクリがある! おいもやし、お前今までだろ!? それがなんじゃねーのか!?」 と食いかかられる。 そのセリフを吐いた男子はわざわざ教室の中にズカズカと入ってきて、 僕の方を指差しながら「眼鏡を調べるべき」と先生に言いがかりをつけた。 だから僕は眼鏡を外して、言いがかりをつける彼にそれを差し出す。 「怪しいと思うなら、掛けるみたら? カンニングなんて無理だってわかると思うけど。」 そういうと言いがかりをつけてきた彼は、眼鏡を上から下から斜めから眺めた後、 実際に眼鏡にかけたりしたが、 当然カンニングができるような何かはなかった。 それでようやく納得したのか眼鏡をポイっと返してくれた。 当然だ。 眼鏡にカンニングのための細工なんかしていないし、 されていなければ この眼鏡をかけたって、なんの効力も得られないのだから。 そう、僕はメガネなんか普段かけない。 今回の100点は彼のいう通り、この眼鏡のおかげだ。 この眼鏡(伊達)は、『受験戦争』という漫画の一番頭のいいキャラクターで 眼鏡をかけているのが特徴だ。 食事を忘れるほど勉強に明け暮れる毎日。 学校の期末試験くらいは一瞬で解いてしまうというヤバいキャラ。 そのキャラクターの眼鏡をかけると、驚くことに彼の思考回路が手にとるようにわかるようになる。 厳密にいうと、問題を見た瞬間その時方がキャラの声として聞こえるようになる。 あとはその声に従って、問題を解いていくだけだ。 そう、だから眼鏡にタネがあるかないかといえば、ある。 そしてカンニングか否かと言われれば… ギリギリ否!! 「もやしくん、すごいね。」 「ちょっと見直したかも。」 「やれば人間できるんだな。」 実力()を見た瞬間の人間の手のひら返しを体感できるとはな… こんなことで見返せるなら、もっと早くやればよかった(やったところでできなかったわけだけど。) 人盛り上がりが終わると、先生は職員室に戻り、 ギャラリーも解散していた。 僕も早くリベルダに報告しないと。 僕は自分の席に座ったまま スマホを取り出してアプリを起動する。
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