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十六話 モテるとは…
「リベルダ、これなんかどう!?
『ミレニアムファイター』の『天竺』!」
自宅に帰るなり、家にある漫画やアニメ、ゲームを漁り、
モテそうなキャラクターを探した。
僕が提案したのは格ゲーの一番人気のキャラだった。
筋肉モリモリの日焼けした、いかついキャラだ。
僕の中でも一押しのキャラだったんだけど…
「却下!」
リベルダにすごい形相でそう言われてしまった。
「なんで!?結構かっこいいし、男子人気すごいんだけど」
「確かにいいキャラだと思うけど、肝心な女子人気はこんな感じだよ」
そう言って画面に出されたのは、キャラの人気投票の結果。
確かに…女子人気は他のキャラに集中していた。
「女の子にモテたいんじゃないの?
だったらそう言うキャラ選ばないと、コスプレしても願いは叶わないよ?
それに、そのキャラはあんたの筋肉不足で魅力でないわ」
「そんなことないよ!僕のボディーメイクの技術すごいんだから…ほら。」
そういうと、過去の筋肉キャラをやった時の写真を見せる。
あの手この手で突き詰めたボディーメイクのクオリティーに文句はないのか、
それについては一切文句を言わなかったが、
「このボディーメイクにかける時間で、鍛えた方がいいんじゃないの。」
と言われてしまった。
画面下に『( ´_ゝ`)』という顔文字とともに。
「まぁ、筋肉作るメイクの自慢は分かったけど、本物の魅力には叶わないよ。
あんたの目的考えると、爽やか系の方が理想には近づけると思うよ?
女の子が好きそうな漫画とかないの?」
「…思いつかなくはないけど…
そう言うキャラ多すぎて、どれにすればいいか…」
正直、今まで好きなキャラにしかなったことないし、
好きな作品しか見てないからその辺りはどうしても弱い。
目的一つ増えるだけで、こんなにどのキャラになるか選べなくなるとは…。
「どういうことしてモテたいとかは…満遍なくなんだっけ…
仕方ないなぁ…代わりに調べてあげる。」
そう言うと、リベルダは画面の下の方に全身を沈ませた。
カタカタと言う音と共に現れる『_φ(・_・』の顔文字
おそらくリベルダは画面の中で僕に代わって色々調べてくれている。
しばらくすると、顔文字表記が『(*゚▽゚)ノ』に変わり
「あ、ねえねえ、コスプレするキャラとかじゃないけど
これなんか参加してみるつもりとかない?」
と言うリベルダの声が聞こえた。
リベルダが画面下から出てくるのと同時に、画面にはリンクが表示される。
そのリンク先を見てみると…
「コスプレイヤーアニソンフェス?」
どうやら、コスプレイヤーたちが歌とパフォーマンスとコスプレの完成度で
優勝を争うというイベントらしい。
基本的にはコスプレしたキャラクターの主題歌とかキャラソンを歌うという縛り付き。
確かに、人気出そうなイベントではあるな
今度の土曜日か…エントリーはまだ受付中…と。
「これ、要望にぴったりじゃない?
人気キャラにコスプレして優勝すればモテ間違いなし!!
賞金も10万くらい出るって。」
「マジで!?」
「歌うまキャラになれば、優勝できる可能性が上がるしモテる可能性大!」
「つまり…モテと金の全てを得られるってわけか!」
「そういうこと!」
これは…色んな意味でビッグチャンス到来では!?
いつもなら参加しないけど…過去コスプレして発揮できた能力のことを考えると…
できないことはないかもしれない。
「なんかそういう…カッコよくて人気ある歌うまキャラみたいなの知らないの?
アイドルとかだと尚よし!」
リベルダはそういうけど…正直、男アイドル系のアニメは自分の好きなジャンルじゃないので詳しくは知らないのだが…
そんな僕でも耳に入るくらい、今話題になってるキャラが1人いた。
「『レジェンド・シンガー』の『天王寺正樹』…とか?」
確か、女子人気が今一番あついアイドルアニメ。
その手のアニメを知らない人でも、ネットで一度は目にしたことがあるくらい人気がすごい。
確か、メインキャラで一番人気。
アイドルグループ『ブルークラウド』のリーダーで、
クールで努力家、でも暗い過去を持ってて…歌が一番上手いキャラだったはず。
「なるほど、調べてみたけどこのキャラいいじゃん!
このキャラなら女の子人気出るし、能力使えば歌唱力確実アップデ優勝狙えるかも!」
確かにこのキャラのコスプレをしたらいけるかもしれない…
やってみる価値は…と思って、ふとあることが頭をよぎり
「だめだーーー!!!!」
と大声で叫んだ。
「え…な、なんで!?」
リベルダは理解できないと言うように、目をパチクリさせて僕の方に顔を向ける。
「だめなんだよ…リベルダ」
「だから…なんで…?」
「知らないキャラのコスプレは…快く思われない。」
コスプレというのは、『好きなキャラ』になりたいという愛着精神があってこそ。
ただ衣装が好きなだけとか、利用してというコスプレは嫌われる。
というか、実際に『よく知らないけどやってみた』とか『似合うから』とか『やりたかっただけ』とかいう理由でコスプレ写真撮ってSNSにUPしてる奴らが炎上しているのを僕は何度かみたことがある。
リレーやテストの時のコスプレは、少なくとも知ってるキャラで好きなキャラではあったから抵抗感はなかったけど、
今回は全く知らないキャラ…
しかもイベントに出るとなれば…これは…叩かれる。
「え…まぁ…そういう人もいるだろうけど…
しんじは…ちゃんとリスペクトしてるんじゃないの?
今だって…キャラの説明ちゃんとできてたし…」
僕の深刻そうな顔を見て、おろおろとするリベルダ。
でもそんな付け焼き刃の…ネット百科事典の知識は通用しない。
「このイベントはエントリー用紙に、なんのキャラのコスプレをして、このキャラのどこが好きかとか書く欄があるんだよ。
場合によってはエントリー時点でお断りも…!」
「じゃかわしいいい!!!!」
僕の意見は、その叫び声とともにかき消され
またしても小さな靴が飛んできて額に当たった。
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