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十八話 目覚め
リベルダのスパルタ教育にて、
寝ずにアニメを全話鑑賞し、ネットで公式サイトを熟読するように命令が下された。
その命令に従い、朝が明けるまで
公式アニメ配信サイトで『レジェンド・シンガー』のアニメを見続けた。
最初は見る気がなくて…
でも本当にアニソンフェスに出るならエントリーシートにキャラの好きなところ描かなきゃいけないから見るしかない。
それだけの思い出、本当に見るのを耐えるのに苦労したが…
見続けた結果、朝の6時には…
「きゃー、まさきさまー!すてきー!」
1人で鉢巻を巻いて、ペンライトを持ちながら
『レジェンド・シンガー』のライブシーンを何度も再生して繰り返し視聴していた。
「しんじ!?」
2時くらいから静かになっていたスマホから、再び声が聞こえてきた。
どうやら僕の様子を見て、リベルダが驚いたようだ。
「あ、おはようリベルダ」
「めっちゃクマできてるじゃん!大丈夫!?」
クマ…あぁ、そうか。
寝ずにずっとまさき様のお姿を見続けたからかな…
「漫画もゲーム、実況プレイ動画もスマホアプリも全部制覇したし。
公式ページのまさき様のページは読破したし、電子書籍で読めるファンブックも全部読んだ。
リベルダ、昨日は色々してくれてありがとう!」
僕は爽やかにリベルダにお礼を言うと、
よっぽどやばい顔なのか、リベルダは顔を青くして謝罪する
「ご、ごめん…私があんなに強く言ったから…
む、無理しなくていいよ!ちょっとくらい寝て!ね!?」
「無理?」
リベルダは何を言っているのだろう…僕は好きで見てるだけなのに。
「だ…だって…昨日あんなに色々言ってたじゃん…
いやいややってるんじゃ…」
「とんでもない!正樹様は立派なお方だ!」
「え…?」
確かに、最初はいや嫌だった。認めよう。
最初はアニメのノリについていけなかったけど、
公式ページを見て、原作漫画を読んで、考察サイトを読んでいたら…
早い話…僕はハマった。
「子供の頃から家が貧乏で、親からひどい仕打ちを受けた正樹様は、
高校生になるときに、家を飛び出して…生きていくために芸能事務所入ったんだよ。
それで、売れるために寝る間も惜しんで練習して…ようやく晴れ舞台で仲間と一緒に…それなのに…うぅ…。苦労人なんだよぉ…」
思いっきり僕の様子に引くリベルダ。
「勉強しろって言ったのは私だけど…あんなに興味なさそうだったのに、
今までの好きそうな漫画のジャンルと全然違うけど…一晩でそんなハマる?」
めちゃくちゃバツが悪そうな顔を浮かべてそう言ったが、関係ない。
むしろ、新しい世界を教えてくれたリベルダには感謝している。
「知れば知るほど、世界は広がるよ。
なんならまだ足りないね、ちょっと今度同人誌も買おうかな。」
今までの僕は愚かだった。
ただ興味のないジャンルだからと、食わず嫌いで全く見なかった。
でも、それではいけない…どんなものでもちゃんと観てから作品の良し悪しを決めなければ、選択の幅は狭まってしまう。
それを今日、僕は学んだのだ。
「リベルダ、僕…正樹様のコスプレしてフェス出るから!
そしてその賞金で、正樹様のライブに行くんだ!」
こうして僕に新しい道が開けた。
そんな僕を遠い目をしながら眺めたリベルダは
「…ここまで重症になるとは。」
と、呆気に取られていた。
後日、リベルダは『ただ、コスプレに乗り気になれるくらい、作品好きになって欲しかっただけだったのに』と、思いの外本気になったことに戸惑いを覚えたとを告白したのだった。
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