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二十二話 お疲れさま。
「リベルダ、終わったよ。」
僕はステージを降りて待機所に行った後、
1人の時間を見計らい、スマホを取り出してリベルダに呼びかけた。
「見てたよ〜お疲れ!よく頑張ったじゃん!」
「見てた?」
リベルダ…というか僕のスマホはステージにいる間、ずっとポケットに入れていたはず。
音は聞こえただろうけど、見てたというのはどいうことだろうか。
「ネット配信されてたから。」
「ネット?」
そういえば、このイベントネット配信してるって言ってたっけ。
だとしたら、リベルダがライブの様子をポケットの中にいながら見ることができたのも納得だった。
「でも、その中でネットって見れるんだね…その中どうなってんの?」
「なんか、この前レベル上がってからこの中で画面出せるようになったんだよね〜
そっちから見えない場所にキーボードがあって、
このスマホでできることならなんでもできるよ〜」
リベルダは少し興奮気味で感想を言ってくれてたので、それはまたの機会に聞くことにした。
「そんなことより、本当にすごかったよ!本物のアイドルみたに歌って踊れてた!」
「そんなに言われると…照れるな…」
僕がそう言いながら頭をポリポリかくと、
リベルダはじーっとこちらの方を見つめて
「メイクも間近で見ると見た目もほんと本物そっくりだね。
こうやってみてると、普段のあんたの顔が思い出せないレベルでそっくり。」
とさらに褒めてくれた。
なんかちょっと嫌味があった気はするけど、めでたい場所なので僕は特に気にせず素直にお礼を言う。
「それはどうも、細部まで妥協せずにやった甲斐があったよ。」
衣装とかも勿論だけど、ウィッグ…髪型は細かいハネまで忠実に、でも不自然にならないように最新の注意を払ったし。
メイクも画像ガン見しながらしたしね。
メイクの腕さえあればどんな人間でも、なんにでもなれる。
「あんたさ、そんなに見た目がアイドルキャラそっくりになれるなら、
普段学校行く時とかも、もうちょっと気を使えば?」
「学校はメイク禁止だし。」
「そういう話じゃなくて身だしなみの話。
そのくらいできればモテるまでいかなくても、いじられはしないでしょうに。」
リベルダは人差し指をビシッと僕に突きつけ、責めるように言われる。
ごもっともな意見だけど
「そんなこと言われてもね…頑張ったこともあったけど、波風たたなかったんだよ。
ヒョロイ格好をしてると、どんなに頑張ってもバカにされるだけで特に反応ないし
あれだけバカにされたら、モチベーションが上がらない。」
それに、キャラになりきるためだったら見た目に気を使えるんだけど、
学校に行くためだけに、自分の見た目にこだわる気にはなれないんだよね。
「ふーん、まぁ何はともあれお疲れさん!失敗せずによくやり切ったね。」
えらいえらい、と頭を撫でるような仕草と
『ヾ(´ᵕ`*)』という顔文字を表示した。
そこまでだったら、素直に嬉しかったんだけど…
「それに、こういうの苦手そうな割にはよかったと思うよ」
付け加えたセリフに少しカチンとくる。
「失礼な、人の性格勝手に決めないでよ。
普通にこういうの好きだよ。」
ムスッとしてリベルダに言い返すが、
リベルダはそれに何か思うことはなうどころか、
クスクス笑いながら僕を小馬鹿にする
「うそぉ〜学校でぼっちなのに?」
「それは…学校であんま喋らないのは、向こうが僕を邪険にするから。
見た目だけで判断する奴らと仲良くしたくないだけだよ。
引っ込み思案とか、コミュ障とかじゃないんだって。」
リベルダは信じず「強がっちゃって〜」と茶化してくる。
強がってない。半分は。
「舞台度胸とぼっちのことは全く別の話!
別に話すのが苦手じゃないよ!イベントでは普通に人と話すし!」
と、リベルダに説明したのは表向きな理由。
裏事情としては、こんな見た目だと馬鹿にされやすく相手にしてもらえない格下の存在。
そんな僕の発言は良し悪しは関係なく、発言したら場を凍らせる。
最悪なことに身近に柄の悪い奴らがいるので、暴力を振われる可能性がある。
なら、変に関わらない方が得なので、これは僕なりの防衛作。
コミュ障とはまたちょっと違うのだ。
そこまで説明してもリベルダは納得しない。
だから僕ははっきりとリベルダに言う。
「大体、嫌だったら最初にイベント参加提案されてた時点でもっとごねたよ。
コスプレするキャラ選ぶときはそうだったでしょ?」
「まぁ…それはそうだけど…」
僕はリベルダにそういうと、流石に納得してくれた。
ただ、疑問はあるようだ。
「じゃあ、今後こういうステージに上がって、何かしたいとかいう夢があるわけ?」
そう聞かれた僕は、顎に手を添え少しだけ考えると、こう伝えた。
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