二話 趣味のコスプレ、自画自賛

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二話 趣味のコスプレ、自画自賛

僕、裳山(もやま) 真実(しんじ)には趣味がある。 それはコスプレだ。 それ以前も自宅でコスプレして写真を撮ったりはしていたけど、 今年、高校2年になってからはそれに拍車がかかって、 毎週末は、どこかしらのコスプレイベントに参加している。 イベントに参加するたびに、カメラをもった人に囲まれて写真を撮られる経験をしているせいか、人に見せるという意識が生まれた。 そして、メイク・着こなし・立ち振る舞いやポーズといった、 コスプレに必要な能力は上がった。 どれもかなりの腕前だと自負している。 昨日の動画や写真がこれだけUPされてるのに、 誰も勇者が僕だってことに気づかないこの状況こそが、 僕のコスプレ能力の高さを証明するのに十分だろう。 「多少は気がついて欲しいけど…」 なんで何人も廊下ですれ違ってるのに、誰も気が付かないんだよ。 流石にちょっと悲しくなる ただ、気づかれたいかというと… 触られたくはない話ではあるので、それはそれで微妙ではある。 「なんだったんだろうな…昨日の…」 実は、昨日のこと、僕自身はそんなに喜べることではなかった。 確かに、いくら気づかれなくても、 これだけ勇者だなんだと持て囃されれば気分いいだろう。 と思う人間もいるかもしれかにないが、それは赤の他人だから言える意見だ。 冷静に考えてみて欲しい。 普通に考えて、自分の右手が走ってくるトラック止めたら怖くない? プロレスラーでもない(だとしても無理) 特殊な訓練だって当然受けて無い。 実際の腕力は吹けば飛ぶ程度の力しかない僕が、 心当たりがない力を発揮した上に 怪我一つしてないこの体。 普通に怖い いや それ以上に気持ち悪い。 まるで自分以外の誰かの体になったような…そんな感覚…。 そもそもの話。 なぜ僕にあんなことができたんだろう。 「マジで勇者の力にでも目覚めたか…?」 まあ、そんなことあるわけないんだけど。 でも、そうじゃないにしても何か原因はあるよな いつもできないことがあの日にはできたわけだし。 僕は自分の教室を前にして、中に入るでもなく扉の近くに立ち尽くし、 震える右手を見つめながらそう呟く。 「…火事場のバカ力で納得できる力じゃないしな… でも、事実できたわけだし…」 悩みすぎて立つのもめんどくさくなり、扉にもたれて顎に手を当てて考える。 そんな僕をみた女子たちが、 くすくす笑いながら「独り言とかキモーい」「邪魔だからどいて」と言って横を通り過ぎ教室の中に消えていく。 こうやって周りにバカにされるのが、いつもの僕、これが普通。 やっぱ勇者の僕は何かがおかしい。 ただただいつも通りコスプレしただけでなんだけどな... コスプレは二次元を三次元の自分がするけど、それは見た目の話で、 当たり前だけど、本物の魔法やらなんやらが使えるようになったり、本当にで二次元キャラになれるわけではない。 「他に…何か変なことしたか?」 いいや、何もしてない。 いつも通りに、普通にコスプレイベントに参加して 適度にコスプレ仲間と交流して 写真撮られたりしただけだ。 で、考えが一周すると、またありえもしない神になんかの試練を与えられて、能力に目覚めた説が頭を巡る。 神じゃないなら、妖精とか魔女とかでもいいけど… 「待てよ…魔女?」 そこで、あることを思い出す。   いや、絶対に関係ない。 絶対に関係ないと思うのだが… 「そういえば…あの勇者のコスプレ衣装を買った店… 占いの館のような外観で……かなり怪しかったんだよな。」 店主も魔女っぽくて気味悪かったし。 探してた衣装があそこしかなったから買ったけど… まさか、ないない、絶対ない。 でも…一度思い付いてしまうと、他の可能性を考えることはできなくなる。 というか、あれ以外思いつかない。 本当に、いつもと違うのはあの店以外にあり得なかった。 だとすれば… 「店…行ってみるしかないのか…?」 そう言葉を発したと同時にチャイムの音が校内で鳴り響いた。
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