五話 嘘のような事実。

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五話 嘘のような事実。

「うぅ…やっぱ誰も信じてくれない… どうせこんな所に閉じ込められてたら、プログラムとおんなじ存在ですよーだ。」 妖精は涙を大量に流しながら大声でそういう。 画面の下には『(´;Д;`)』の顔文字が表示されている。 可愛いアピールだろうか。 っていうか、顔も見えて声も聞こえるのに顔文字表示される意味は…? こんな顔文字が表示がされてるってことは、 ほぼプログラムと認めてるも同然な気がするが? いや、プログラムとはいえ女の子。 確かに僕は言葉を選ばなかったかも知れない。 こういうのはちゃんと共感して謝罪して、慰めてあげるのが吉だよな。 ちゃんと誠意を持って謝ろうと、体を起こして頭を下げる。 「ごめんごめん、悪かったよ。 そうだよなー今のAIは感情くらいあるよな〜泣き止んで、ね?」 そう言って煽てると、キャラクターはピタッと泣くのを止める。 効果があったのかと思ったが、キャラクターは今度はゆっくりと顔をあげてこちらを睨みつけ 「だから違うっての!」 と怒鳴りながら、何かを握りしめ画面に向かって何かを投げた。 あぁ、なんと可愛らしいキャラクターだろう。 スマホの画面に向かってプログラムのものを投げたとことで何かあるわけでも… 「ふべしっ!」 あった。 何かあった。 確かに今、スマホの画面から何かが飛び出してきて、頭に直撃した。 「え、え!?」 「およ?」 僕もスマホの中にいるキャラクターも、ぽかんとした表情を浮かべお互いの顔を見合わせる。 僕はしばらくの沈黙の後、スマホ画面から飛び出した何かを探した。 するとすぐ近くに小さなミニチュアの靴が落ちていた。 僕はそれを指で摘んで確認すると 「あ!それさっき私が投げた靴!」 と画面の中のキャラクターが声を上げて喜ぶ。 僕は画面に映る女の子をもう一度見ると、 確かに片方の足が裸足で、もう片方にはいている靴は 今僕が指で摘んでいるくると全く同じものらしい。 つまりこれは…という、これ以上ない証拠となった。 「じゃあ…本当に…AIじゃないの?」 「やっとわかってくれた見たいね! そう!私は人間にプログラムされた存在ではなく しっかりと自分の意思を持つ妖精なのです!」 「…」 うん、なんか…AIの方が現実味あったな。 妖精の方が非現実的すぎて信じられない。 でも画面から靴が飛び出るなんて、非現実的なことが起きたばかりだし… まぁ、本当でも嘘でもどっちでもいいや…泣かれる方が面倒。 もう否定するのはやめよう。 また物を投げつけられたくない。 「ナルホド、キミハヨウセイサンダッタンダネ」 「何よその棒読み! まぁいいわ。理解してくれたならなんでも!」 少しだけムッとした様子を見せたその妖精は、 理解してもらえたことに喜びを感じたようだ。 ただ、それに比例するように、こっちは疑問が湧いて出てきた。 「あの、妖精さん? あなたが本当にAIじゃないというのであれば、 なぜこんなアプリの中にいるのでしょうか?」 機嫌を損ねないように、丁寧な言葉を選んで話しかける。 突然の丁寧な口調に白々しいと思ったのか少し不満な顔をしたが、 「その話をしないとね」と呟き 妖精は少し遠い目をしながら、訳を話し始めた。 「端的にいうと、捕まって閉じ込められたの。」 下の方にまた『(三¬_¬)』という顔文字が表示されている。 どうやらいじけているようだ。 「私だって、好きでこんなとこにいないわよ。 元々世界を自由に花畑を飛び回るのが好きな…お気楽な普通の妖精だった。」 花畑にいた妖精か…蝶々の羽もあるからか、イメージ通りだな。 なんか妖精ってファンシーな感じして、花畑の花の蜜を吸ったり、 草冠つくったりしてそうだもんなぁ… という感想を持った。 「花畑にいたときに、一番楽しかったのは蜂との戦いかな… 花の蜜の取り合いで…毎度毎度いい戦いができたわ… 楽しかったなぁ…いいファイトだった。」 妖精が拳を作ってした、この発言をするまでは。 うん、想像と全然違った。 この妖精、逞しすぎる! 通りでさっき靴を投げられた時も こんなに小さいのに、あんなに痛みを感じたわけだ。 妙に納得。 妖精は僕の様子などお構いなしに、そのまま遠い目をしながら話を続けた。 「でも、そんな自由な日々も、ある日突然終わったわ。 あのおばばのせいでね。」 「おばば?」 「このアプリのお店の店主。」 そう言われて、あの怪しげなお店の店主を思い出す。 あの魔女のような年配の女性のことか。 なるほど…おばばか…しっくりはくるが… 「仮にも女性にそんな呼び方失礼じゃない?」 「仕方ないじゃん。それが名前だもん。 大山(おおやま)馬場子(ばばこ)。略して『おばば』 本人がそうやって呼んでくれって言ったんだよ」 妖精はツンっとしてそう答えた。 まぁ、本人がそういうならいいけど。 まぁ、おばばの呼び方はとりあえず置いておいておこう。 「で、そのおばばさんがどう関係するの?」 僕がそう聞くと、ちらりとだけ妖精は僕の顔を見るてため息をつく。 そしてこう呟いた。 「魔法使って私のこと呼び出したの。 あのおばば、魔女だから。」 「ま…魔女!?」
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