もう一度、君に届けたくて

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「っ!私、中三の卒業式から、昨日の始業式にタイムスリップしてきたのっ!」 しまった。こんな大きな声で言うんじゃなかった。 私の声は教室に響き渡り、沈黙が続いた。 「は?美咲何言ってんだよ」 「ひまりちゃん何言ってるの?タイムスリップなんてするわけないよ」 『冗談だ』という声が聞こえてきて、私は肩を震わせた。 俯く私に視線が集まり、どくりと心臓が跳ね上がる。 私は、みんなから注目されるのがとても苦手。 発表ですら緊張するのに、今はとても言いづらいことを言って、みんなから注目されている。 説明したいのに、言葉が出てこない。 どっ、どうしよう… 思わず耳を塞ごうとした私に、芽花が叫んだ。 「みんな、やめて!!」 私はびっくりして顔を上げた。 芽花に続いて、美桜が言った。 「ひまりは嘘なんてつく人じゃない!きっと何か理由があるはず。だから、みんなで聞こうよ!!」 美桜は私に視線を送った。 『理由、話して』と言っているようだ。 私は手に汗を握りしめて、緊張しながらみんなに説明した。 信じてもらえるかどうかわからないけど…! 「私っ!今年の卒業式終わりに、人生最大のショックなことがあったの!!家に帰って急いで調べたら、『ショック』っていう症状で…ここにタイムスリップしてきちゃった…」 みんなや先生もあり得ない、と言う顔をしている。 「本当のことなの、信じて!!」 私は胸の前で、手を握った。 すると先生がパソコンで何かを調べ始める。 「みなさん、聞いてください。美咲さんは嘘をついてません」 私はびっくりして、先生に視線を送った。 「せっ、先生?」 「5年前ぐらいに、先生の知り合いが、美咲さんと同じ症状が出た時があったんです。その知り合いは『ショック』という症状だったんです」 私はショックという言葉を聞いてビクッとした。 「ショックはショックの症状が出た日の大体一年前にまでタイムスリップしてしまう。だけど、タイムスリップする前の記憶はあるという謎めいた症状です。ショックという言葉を聞いて、ピンときました。美咲さんは卒業式の日にタイムスリップしたから、昨日の始業式の日まで遡ってきてしまったというわけです」 先生にまで説得されて、みんな固まっている。 でも、これで信じてくれただろう。 私がタイムスリップしたっていうことを_。
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