始まり

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始まり

 もし、私が第一志望校に合格して夢見心地になっていたなら。  もし、その高校の吹奏楽部に入部したくて部活動見学に参加したなら。  もし、その見学中に陰で三年生の先輩方が、二年生の気弱そうな先輩を罵っている瞬間を目撃してしまったなら。  もし、私がその様子を「いじめだ」と理解してしまったなら。  もし、これが現実世界での出来事だったなら……私は何?  帰宅して真っ先にベッドにダイブしたら、真実と疲労感に溺れかけた。腕や足をじたばた動かしても、ただ冷たい空気に苛まれるだけ。  勉強机に置かれた、埃を被ったシーボトルが視界に入った。  そうだ。私の憧れたアオハルという言葉が相応しい高校生活は、全部妄想だったのだ。
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