君と再会した日。

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君と再会した日。

「やあ、七夏。久しぶり」  三日前、幽霊になった君と再会した。 「久しぶりって、三日前も同じこと聞いたよ」  あきれて溜息を吐くと、彼はすでに実体のない手を軽く振る。 「ほら、時間って気づかぬうちに経つじゃん?」 「だからって会うたび久しぶりっていうのは、ちょっと」  じっと彼を横目に見ると、彼はむっとしたように透けた頬を膨らませる。 「文句が多い」 「そっちの感覚がおかしいんだよ」 「しょうがないでしょ」  一息つくように口を閉じ、目を誰も通らない夜道に目を向ける。  ――こっちには時間って概念がないんだから。  確かに、と返しつつ、コンビニで買ったホットレモンを口に含んだ。ここ数日、やけにのどが渇く、と思いつつ。  夜の街、誰もいない公園で、私たちはただ駄弁っていた。彼が戻ってきてから三日。ずっとこんな風に過ごしている。  今は秋で、まだ凍えるような寒さは感じない。  最初は驚かなかったわけではない。幽霊が見える私でも、最初は本当に心臓が飛び出さんばかりに驚いていた。 「――なんでいるの」 「第一声がそれか」  アハハ! と私にしか聞こえない大きな声を出す。音というより超音波に近いような感覚にくっと顔をしかめると、彼は「はあ」とため息を吐き、こちらをじっと見つめた。 「懐かしいな」 「そりゃそう」 「数か月くらいか?」 「…………七年」 「え?」 「七年が経ったよ」 「……そんなに経ってたのか」  そんな会話をして、その日は帰った。私も私で仕事があるから、あまり夜遅くなることもない。  何より彼には時間がある。  星の見えない夜空を見上げて、ぼんやりと再会した日のことを思い出していると、彼は隣から私の顔を覗き込むように見た。 「――七夏は変わらないな」 「そうかもね」  これも三日前に聞いた言葉だ。だけど仕方ない。彼の中で整理がつかないのだから。 「しかしみんな、もう社会人になっちまったのか」 「そうだね」 「早いもんだなあ」  どんなに遅くても、四年。社会人になって三年は経つことだろう。人によるが、ある程度はそんなものだ。  彼は少し残念そうに笑った。 「七夏だけは変わってなくてよかった」  まるですがるような声に、私は口をつぐむ。 「……いつまで」 「ん?」 「いつまでここにいるつもり?」  つい、言葉がきつくなる。だけどこれだけははっきりさせなければならなかった。  彼は、うーん、とうなり、顎に手を当てる。 「……あと、四日」 「そか」 「それだけかよ」 「そりゃ、幽霊だから」 「まあ、そうだけど、もっと他に――」  文句を垂れる彼から目をそらし、夜道に目を細める。そこを浮遊する幽霊たちがじっとうかがうようにこちらを見ていた。だが、目が合ったとたん、すっと離れていく。 「――見えるって損だな」 「ん? どうした?」 「いや、なんでもない」  彼にとっても損だということに気付いて、言葉を濁す。その夜もまた、ゆっくりと過ぎていった。
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