戸惑う女と受け入れた男

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戸惑う女と受け入れた男

 *** 都心にあるとは思えない豊かな緑と静けさに包まれた老舗料亭『仁しな』 伝統と格式が漂う純和風家屋の個室で、倉石(くらいし)美雪(みゆき)は長時間の正座による足の痺れに耐えていた。 (ううっ、足が痛い~) ぴりぴりとした強い痺れに襲われているだけでなく、慣れない着物のせいで息も苦しい。 心の中ではだいぶ悶絶しているけれど表情には出さない。にこやかな笑みを浮かべながら、季節の食材をふんだんに使った懐石料理を口に運ぶ。 というのも今は、大切なお見合いの真っ最中。 とてもじゃないが足が痺れた、着物が苦しいなどと言えるような雰囲気ではない。 神聖なお見合いの席をぶち壊すような粗相があれば、両脇に座る伯父と伯母に叱られる。 (それだけはイヤ……!)
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