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(だけどなぁ……)
外見に大きな変化があっても、中身はそれほど変わっていないようだ。
大学生の頃と同じように、年上の美雪をかわいいと言っておだててからかってくるところなんか特にそうだと感じる。
そんなことを思いながら、目の前をゆったりとした足取りで進む悠太朗の後ろ姿を眺めていた。
すると、突然彼が池のそばでしゃがみ込んだので美雪も足を止める。
悠太朗がスーツのポケットから取り出した袋には錦鯉のエサが入っているようで、指でつまんだそれを池に向かって落とし始めた。
食事に気付いた鯉たちが一斉に集まり、顔を出して、口をパクパクとさせている。
いつの間に鯉のエサなんて持ってきたのだろうと、美雪は呆れながら悠太朗の後ろ姿を見つめた。
(あーあ。私、どうしてここにいるんだろう)
ふと、そんなことを思う。
今にも雨が降り出しそうな六月のどんよりとした梅雨空を見上げながら、悠太朗とお見合いをするに至るまでの経緯を思い出した。
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