戸惑う女と受け入れた男

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きっかけは祖父が急逝したことだと思う。 美雪の母の実家である倉石家は仁しなほどの古い歴史はないものの、それでも長く続く呉服屋を経営している。 祖父はそこの大旦那を務めていたけれど、三カ月ほど前に倒れてから還らぬ人となった。 祖父亡きあと呉服屋を継いだのは母の兄である伯父だが、どうやら祖父の代から経営難に苦しんでいたらしく、潰れるのも時間の問題だと頭を悩ませていた。 そんなとき資金援助の申し出をしてきたのが祖父とは旧知の仲にある仁しなの現社長――悠太朗の祖父だ。 ありがたい申し出に伯父は感謝をしてよろこんだけれど、悠太朗の祖父に資金援助には条件があると言われてしまった。 それは、仁科家と倉石家が親戚関係になること。
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