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借りたお金を返せない場合、母は路頭に迷ってしまうのだろうか。
子供の頃からあまり母親らしいことをされた覚えはないけれど、たったひとりの産みの親であることに変わりはない。
放っておくことができず、母のためになるならばと美雪は渋々結婚を承諾した。
伯父があまりにもしつこいので対応が面倒になったからというのもある。
とりあえずお見合いだけはしてみようと嫌々この場に来たわけだが、まさかその相手がキッチンカーの常連客の悠太朗だったとは。
この結婚に乗り気ではなかったので、相手の名前やプロフィールなどは一切目にしていなかった。知っていたのは、祖父と旧知の仲にあった仁科家の跡取り息子だということのみ。
だから、会場に入ってきた悠太朗を見た瞬間、美雪は自分の目を疑った。
見た目はだいぶ変わっていたけれど、美雪の胸を甘く揺さぶるかわいい笑顔が当時と同じだったので悠太朗だと気がついた。
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