戸惑う女と受け入れた男

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一方の悠太朗は会場に入ってきて美雪を見てもそれほど驚いてはいなかった。 もしかして忘れられているのだろうかと思ったが、そういうわけでもなさそうだった。 美雪とは違い、事前にお見合い相手の写真や名前、プロフィールなどに目を通してきたのかもしれない。 「悠太朗くん」 「ん?」 美雪は、錦鯉にエサをあげている悠太朗に声をかけた。 返事をしてくれたものの、彼の視線は池に向けられたままだ。 「美雪さんもやります? めちゃくちゃ集まってくるから人気者になった気分が味わえるよ」 悠太朗の近くにはたくさんの鯉が集まっている。たしかに、人気者だ。 でも、鯉に人気になってもな……と、美雪はエサあげの誘いを断った。 それにしても――。 鯉を相手に人気者感を味わわなくても、悠太朗くらい整った容姿と恵まれた体型を持っていれば、普段から女の子たちが寄ってきてちやほやされているだろうに。 彼女のひとりやふたりいたっておかしくないのだ。 (いやふたりもいたらダメだけど)
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