プチ旅行(side 悠太朗)

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プチ旅行(side 悠太朗)

 *** ――カランカラン。 「おめでとうございまーす!」 十月の雲ひとつない爽やかな空にまで届きそうなベルの音が響き渡る。 悠太朗と美雪を取り囲みながら人々が祝福の拍手を送っていた。 「出ました、大当たり! 高級温泉宿ペア宿泊券プレゼント」 商店街に設置された福引会場。 対象の店舗で買い物をするとチケットが一枚もらえて、三枚集まると一回抽選に参加できるそれに美雪がチャレンジをしたのが数秒前のこと。 回転式抽選機の前で立ち尽くす美雪の肩に悠太朗がぽんと手を添えた。 「すごいじゃん美雪さん。一等だよ」 「う、うん……」 まさか一等を引いたとは信じられないのだろう。驚きから固まっている美雪の代わりに悠太朗が一等の景品であるペア宿泊券のチケットが入った封筒を、福引大会の主催者である商店街組合の男性から受け取った。
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