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「冗談だよ。悠太朗くん一緒に行こう」
どうやらわざと言っていたらしい。きっと美雪は最初から悠太朗を誘うつもりだったが、からかってみたのだろう。
(美雪さん、そういうところあるよな)
ちょっとだけムッとした悠太朗は、一緒に行こうと言われたことがとてもうれしかったが素直にうなずいてやるものかと思った。
「どうしようかな。俺、忙しいから」
「じゃあ柳さんを誘う」
「なんで柳さん⁉」
それだけはやめてくれと美雪の腕を掴んだ。
五十代とはいえ柳は男だ。しかも独身。人のよさそうな優しい性格をして無害そうに見えるが、やはり男だ。
美雪とふたりきりで温泉宿になど泊まらせていいはずがない。
「俺が行きます。というか一緒に行かせてくださいお願いします」
「でも悠太朗くん忙しいんだよね」
「忙しくない。めちゃくちゃ暇」
悠太朗は首をぶんぶんと大きく横に振った。
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