プチ旅行(side 悠太朗)

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けれど、本当はとても忙しい。 仁しなの現社長である祖父から仕事の引き継ぎがいよいよ本格的になり、正確な時期は未定だが来年度には社長に就任することが決まっている。 各方面への挨拶まわりなど悠太朗のスケジュールは多忙を極めていた。 今日も休みなのだが夕方から大事な取引先との会食の予定が入っている。だからめちゃくちゃ暇なのではなく、むしろ休みを取るのが難しいのが現状。 それでも美雪と一緒に温泉宿に泊まりたい。 「俺と行こうよ美雪さん。ほら、ちょうど再来週に水回りの工事で料亭が三日間休みになるから、そこでどう?」 「そっか。その日なら行けるかもね」 楠木さんも彼氏とプチ旅行に行くって言ってたし、と美雪が仲良しの仲居の話を持ち出したので、それに便乗させてもらうことにする。 「じゃあ俺らもプチ旅行ってことで」 「プチ旅行かぁ。いいね」 美雪が笑顔でうなずく。けれど、すぐにその表情が曇った。
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