戸惑う女と受け入れた男

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足の痺れを忘れてしまうほどのキュートな笑顔に胸がきゅんと高鳴る。 美雪はほんのりと熱くなる頬を隠すように俯いて食事を口に運んだ。 仁科(にしな)悠太朗(ゆうたろう)――美雪のお見合い相手で、ここ『仁しな』の跡取り息子だ。 今年で二十八歳になる美雪よりも四つ年下の二十四歳。大学卒業後は一年ほど京都の料亭で修業をしていたが、実家の料亭を継ぐために今年の春から東京に戻ってきたそうだ。 そんな悠太朗が次期社長となる仁しなの創業は大正時代。歴史の教科書に名前が載るような偉人たちも利用し、現在も財界の重鎮や経済界の大物などがこぞって利用するような格式の高い高級老舗料亭だ。 そんなところのお坊ちゃまと、母子家庭のちょっと複雑な環境で育った美雪がなぜお見合いをしているのかというと、これには深い事情があるわけで――。
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