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病室でたくさん考えたけれど、答えが出ないまま繭子の病室を出てきてしまった。
泣きながら歩く美雪をすれ違う看護師たちが心配そうに見ていたし、声をかけてくれたりもしたけれど「大丈夫です」と答えて歩き続けた。
病院の外に出る頃には涙は引いていたが、泣いたせいで目が赤く腫れていたのだろう。
「なにがあったんですか」
悠太朗が心配そうに尋ねてくる。けれど、美雪は首を横に振った。
「ううん、なにもないよ。大丈夫」
これ以上は迷惑をかけたくない。そんな思いから美雪は嘘をついた。
悠太朗はそれ以上深く聞いてくることはなかったが、美雪を心配していないわけではないのだろう。
「帰ろう」
彼は美雪を気遣うようにそっと手を差し出す。
「うん」
美雪はうなずいて悠太朗の手を取った。
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