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「――まさか悠太朗くんがお見合い相手だったとはね」
お見合いも終盤に入り、『ふたりで外でも歩いてきたら?』と提案されて、料亭の敷地内にある立派な庭園を散策することにした。
美しい緑に囲まれた石畳の小路をゆっくりと進みながら、少し前を歩く背中に向かって声をかけると、それに気づいた彼が足を止めて振り返る。
「驚きました?」
「もちろん」
「ですよね」
両頬にえくぼを作り、楽しそうに笑った悠太朗が再び前を向いて歩き出す。
美雪はそのあとを追うけれど、慣れない着物と草履、それと足の痺れがまだ少し残っているせいでよちよちとぎこちのない歩き方になってしまう。
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