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仲直り
「え、だって、さっき来たばっかりなのに、良いの?」
「良いの良いの」
と、預けていたコートを受け取ってくれていたようで羽織らせてくれた。
「あ、ちょっと待って」
美穂にだけは、玲央と先に帰る旨のメッセージを送った。
〈了解! 仲直りしなよ〉と返って来た。
〈うん、ありがとう〉
「行くよ」と私の手を取り、2人でお店を出た。
玲央は、繋いだ手を自分のコートのポケットに入れてくれた。
──暖かい
というか、手を繋ぐのも久しぶりだ。嬉しくて顔が綻ぶ。ようやく、2人きりになれたと思った。
黙ってチラッと玲央の横顔を見上げた。
「ん?」と優しく笑っている。
「落ち着いたの?」
「そうだな」
「不器用だから両立出来ないんだもんね」
「ふふ、ごめんって」
いつもの玲央だ。良かったと思った。
たったコレだけのことで、仲直り出来る関係。
私は、やっぱりホッとして泣きそうになっていた。
玲央は、それに気づいて、「え、泣くなよ」と笑っていたが、その言葉で余計に泣けて来た。
もう遅い……と思った。
「詩音!」と立ち止まって、私の涙を指で拭って、
「ごめんな」と、優しく抱きしめてくれた。
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