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このアーティストの曲聴くの、久しぶり。
サブスクのアプリを何気なくいじっていたら、懐かしい曲特集というのがあったのだ。
懐メロとまでは言わないけど、ミレニアルの世の中で流行っていた曲達。
Z世代の若者に言わせたら、充分に懐メロだろう。
いや。もしかして知らないかな?
このアーティストは当時とても売れていた人で、若い人はほとんど皆彼女の歌に夢中だった。
そんな彼女のアルバムの中の一曲。
……私はこれらを彼の車の中で聴いていた。
思い出すのも切ないほどの昔になってしまった、あの頃。
……あの頃の私の傍には、いつも彼がいた。
黙って何も言わず、仕事の愚痴を、彼氏の悪口を、友達付き合いの不満を吐き出す莫迦な二十歳の私を、ただ笑って見ていてくれた。
自分勝手に呼び出して振り回し、労る事もしなかった。
……だからだろう。
彼は遠くに行ってしまった。
いい加減、こんな女に付き合い切れなかったんだろうな。
私が彼だったら、やってられないに決まってるもの。
……私はどうして、あの人を大事にできなかったんだろう?
車の助手席でうたた寝する、私の額を撫でる手。
あの手の温かさを、優しさを、今も鮮明に覚えているのに。
こんなにも自分を愛してくれる人はもう二度と現れないと、心の何処かでちゃんと知っていたのに。
彼の車の中で、繰り返し聴いた筈のあの歌。
私は何故か、その曲を思い出すことができないままでいる。
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