ペンフレンド

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 それから私と純ちゃんの文通は再開した。私は純ちゃんの家に手紙を送り、純ちゃんからは事務所に手紙が送られてきた。  私は近況報告などを綴った。失敗したとか中々上達しないとか、誰にも言えない弱音を純ちゃんには話す事ができた。  純ちゃんはそんな私を暖かく、でも力強く応援してくれた。  私はまた純ちゃんに会いたくなった。手紙では書ききれないほどの思いがどんどん膨らんできていた。ちゃんと会ってお礼を言いたい。純ちゃんの優しい顔を見たい。暖かい声を聞きたい。  そんな思いを胸に秘めつつ、私は仕事に励んだ。  そして遂に朗報が届いた。 「武道館ライブが決まったぞ」  鳥肌が立った。メンバー全員で抱き合った。とうとうここまで来たんだ。  毎日朝からレッスンをした。それでも足りないような気がして4人で集まって自主練をした。準備も着々と進んで行く。チケットも既に完売。もう後戻りできない。  武道館公演まであと1週間となった。 「春香! 遅れたよ!」 「夏子だって音程外してるじゃん!」  罵声が飛び交う。みんな初めての大舞台で緊張の糸は極限まで張り詰めている。ちょっとした事が引っかかる。 「冬美! 気合い入ってないよ!」 「そんな事ない。頑張ってるよ」 「どうせ彼氏の事考えてるんでしょ。みんな我慢してるのに」 「そういう人がいると迷惑よね」  3人で私を集中攻撃してきた。
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