ペンフレンド

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「彼氏じゃないよ。ただのペンフレンドだよ」 「でも男でしょ。私たちなんて友達も親も兄弟も、みんなかなぐり捨てて命がけでやってるの。あんたみたいに中途半端なヤツがいるとやる気が失せるのよ」 「ホント。1人だけお花畑だもんね」 「純ちゃん来てくれるかな〜。楽しみ〜」  夏子がふざけて言った言葉に、私は切れた。 「そんなんじゃない!」  私はレッスン場を飛び出しタクシーに乗った。 「空港まで」  唇を噛み締めバックを強く抱きしめた。  そんなんじゃない。そんなんじゃないのに! 私は純ちゃんがいるから頑張れるんだ。純ちゃんは私の支えなんだ。  怒りと悔しさに震えながら、私は空港の窓口へとやって来た。 「鹿児島まで」  飛行機に乗り込むと程なく離陸した。小さくなって行く都会の町並みを呆然と眺めていた。そして消えた。窓の外は真っ白な雲しか見えなかった。  なんて事をしてしまったのだろう。とんでもない事をしてしまった。  もう泣いてもわめいても戻る事はできない。ケンカなんて今までに何回もあった。次の日に「おはよう」と笑って言えば元通りだった。  私は毛布を被り、声を殺して泣いた。  鹿児島の空港に着いた。この前は期待と喜びでいっぱいだった。でも今日は真逆だ。
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