ペンフレンド

2/15
20人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
 私は寒い県に住んでいたので暖かい九州に憧れていた。逆に純ちゃんは雪国に憧れていた。お互い自分の住んでいる町の事や学校の事を手紙に書いて送りあった。  メールみたいにすぐに届かないし、実際に字を書くという手間はあった。でも毎日ポストを見る楽しみができた。丸っこい字の純ちゃんは可愛い子なんだろうなと想像した。手紙には自分の似顔絵や相手の想像図を描いたりもした。メールでは味わえない楽しみがいっぱいあった。  中学に入った頃からお互い部活や勉強に忙しくなって、いつの間にか手紙を書かなくなってしまった。でも今でも故郷の家の机の中に純ちゃんからの手紙はしまってある。大切な宝物だ。 「それでは登場してもらいましょう。どうぞ!」  司会者が大袈裟にスタジオ中央にある扉に向かって手をあげた。  私は他のメンバーみたいに顔を知っているわけではない。初めて会うのだ。ずっと会いたかった純ちゃんにやっと会える。  スタジオが暗くなった。スポットライトが扉に当たる。ゆっくりと、少しずつ扉が開く。扉の向うの人影があらわになった。 「フウちゃん、久しぶり」  扉から現れた人物を見て私は呆然とした。  そこには男の人か立っていた。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!