ペンフレンド

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 今までのどのライブよりも緊張した。もしかしたら笑顔は引きつっていたかもしれない。ダンスもワンテンポ遅れてたかもしれない。  純ちゃんが見てるかもしれない。そう考えただけで不安だらけの小学生に戻ってしまった。純ちゃんはガッカリしたかもしれない。  後悔しか残らない舞台になってしまった。他のメンバーたちは満足気にお喋りしていたが、私は話に加われなかった。1人無言でメイクを落としていると、マネージャーがやって来た。 「冬美ちゃん、郵便でーす」  マネージャーは私の目の前に一通の手紙を差し出した。「冬美様」と丸文字で書かれていた。 「これ……!」  マネージャーの手から手紙を引ったくると、私はすぐに開封した。 『フウちゃん鹿児島へようこそ! オールシーズンが鹿児島にやって来ると聞いて、すぐにチケット買ったよ。毎日チケットを抱いて寝ました。 お手紙ありがとう。久しぶりに見たフウちゃんの文字、変わってなくて嬉しかった。 手紙でしか知らなかったフウちゃんの顔、声、踊る姿。みんな目に焼き付けておきます。 遠くからだけどこれからも応援してるよ。頑張ってね!! 純』  私が踊るイラストが添えられていた。 「冬美、どうした!?」  秋菜が慌てて駆け寄って来た。それにつられて他のメンバーもティッシュやタオルを持ってやって来た。知らぬ間に私の頬は涙でびしょ濡れになっていた。 「純ちゃんが、来てくれてたの」  みんなが良かったねと言いながら私の髪を撫でたり抱きしめてくれた。嬉しくて涙が止まらなかった。  純ちゃん、私はこんなにも素敵な仲間に囲まれて仕事をしています。とても幸せです。純ちゃんもそうならいいな。純ちゃんは今どんな暮らしをしているのかな。
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