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たしかに、婚姻の3か月前になっても彼を異性として見ることはできなかったけれど、それでも、裏切られることはないと思うくらいには、彼のことを信頼していた。
密かにヴィクトリア嬢のことを慕っていることは知っていたから、婚姻後、折をみて側妃として迎えれば良いかと思っていたのに。
なのに、あのバカ王子!!
バンッと乱暴に扉を開けると、一瞬、私を見て狼狽えるような表情をしたヴィクトリア嬢が立っていた。
ヴィクトリア・コールネイ。
由緒ある侯爵家の令嬢にして防衛大臣が溺愛する一人娘。
陶器のような白い肌に、折れそうなほどに華奢な身体。
王国人にしては背が高く、全身に程よい筋肉がついている私とは正反対の、小柄で庇護欲をそそる外見をした彼女は、どこからどう見ても深窓の令嬢。
彼女のような箱入り娘が、王国の第一王子であり、3か月後に筆頭公爵家の令嬢である私との結婚が決まっているランスロットを寝取ろうとなんてするかしら? 並大抵の神経の持ち主じゃ、できないわ。
――きな臭いわね。
「っヘレナ様。この度は、私のせいで、本当に申し訳ございません」
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