第2話 最愛の祖母の死。そして、帝国皇太子との婚約

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 私は、アングレア王国の筆頭公爵、第7代サーフォーク公リチャード・ラッスルの一人娘であり、王国最古参の公爵位の唯一の承継者でもある。  サーフォーク公爵だった父親は、私が8歳の頃、帝国との戦いで命を落とした。  まだ若く美しかった母親は、父の意志を継ぐだけの豪胆さも情熱も持ち合わせてはいなかった。  未亡人となっても妻にと望む声が後を絶たず、喪が明けるのと同時に、王国の侯爵家へと嫁いでいった。  独り残された私のもとへやってきてくれたのは、父方の祖母だった。  私が成人するまでの間、祖母が領地運営の代行をしてくれることになり、それからは祖母と2人、田舎の領地で暮らし始めた。  もともとはネウステリア帝国の公爵令嬢だった祖母は、家庭生活の中でさりげなく、私に公爵家を継ぐために必要な教育――そこには帝国語の習得も含まれていた――を施してくれた。  実母は再婚した夫との間に2男1女を授かったらしいが、私と異父弟妹との間に交流はなく、再婚してから母が私に会いに来ることは、一度もなかった。  そんな私にとって、祖母は唯一の家族だった。
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