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風一郎は、本当に変わった人だった。
年齢は二十四歳。T大を卒業した後、都内の会社の営業部で働いているという。両親が幼い頃に亡くなってしまい、天涯孤独で一人、アパートで暮らしているという。だからなるべく早く、共に生きてくれる“家族”を求めていたのだと言っていた。
「一人暮らしが長かったから、料理が上手いのね」
「え、ええ、まあ。ちょっとした家庭料理くらいですけど」
「十分凄いわよ!このグラタンとか、どうやって作るの?私にも教えてくれない?」
「いいですよ」
婚活パーティを機に、付き合うことになった私達。私は彼の家に何度も何度も遊びに行った。美味しい料理をごちそうしてもらい、夜は一つのベッドで体を温め合った。彼は私の肉がつきすぎた体を醜いとは言わず、むしろ“食べちゃいたいくらい可愛いです”とほめたたえてくれたのだった。
「特にそう……気持ちいい時の声、最高に可愛いです」
「や、やだ。やめてってば」
付き合ってから三か月。短すぎやしないかと両親には渋い顔をされたが、私の心は固まっていたのだった。
この人と、夫婦になりたい。私のような不器用で、醜い女でも受け止めてくれるこの人を。可愛いと言ってくれるこの人を。そして私もこの人を支えて、本当に幸せな家族を作り上げていきたいと。
「お願いします。娘さんを、僕にください!」
私に不釣り合いな、若いイケメン。最初は風一郎を怪しんでいた両親も、彼の誠実で真摯な態度に惹かれたようだった。両親と数回一緒に食事をした後、私はレストランで彼に正式にプロポーズをされたのである。
「僕と、夫婦になってくれませんか……公子さん」
「もちろんよ、風一郎さん。世界で一番、貴女を愛すると誓うわ」
「ああ……」
私の言葉に、彼は目を潤ませて笑ったのだった。
「ありがとう。本当にありがとう。……公子さん、今の台詞、もう一回言ってくれない?」
「もう」
相変わらずだ。彼は本当に、私の声が好きらしい。
「世界で一番愛しているわ、風一郎さん。貴女のためなら私……何でもできる、そんな気がするの」
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