僕は知らない

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僕は知らない

ずっと前から、十五歳の誕生日に死のうと思っていた。 何でかは、よく分からない。 正体不明の寂しさと哀しさと、生きていることの疲れ。 それらが積み重なって、自分でも知らないうちに死への憧れが心を支配していた。 どうして、僕は生きているのだろう。 何のために、息をしている。 分からない。 分からない。 考えるのも面倒になったので、死のうと思った。 ただそれだけのことだ。 普通に生きることなら、人前ではできた。 皆と同じように話して、授業を受けて、家に帰って寝る。 それくらいのことはできていたけれど、何かが足りない、ずっとそう思っていた。 手を伸ばせばそこにあるものが、気付いた時にはもう遅くて、大切なものは零れ落ちていって、会いたい人にはもう会えない。 そんな世界なら、僕はもういらない。 底なしの孤独感。 それだけだ。僕に残っているものは。 お母さんはよく言っていた。 「貴方の命は助けてもらったからあるの、だから精一杯生きなきゃ駄目」 そんなことを律儀に守っていた時もあったけれど、もうどうでもいい。 だって、そんなことを言ったお母さんはもういない。 いつの間にか変わっていた街並みに目を向けてみる。 結構遠くまで来たようだ。 車のナビに目を落とすと、午前二時半と表示されていた。 「おい少年。しょげるなよ」 僕は苛々した。 おじさんに何が分かる。 そんな心もこもってない言葉で、励まされてたまるものか。 「何でそんなこと言うの」 「何でって、いやぁ」 「ほら。目的も理由もないんでしょ、だったらそんなこと言わないで」 「え?うーん…」 言葉を濁し、おじさんは黙り込んでしまった。
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