10人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
僕は知らない
ずっと前から、十五歳の誕生日に死のうと思っていた。
何でかは、よく分からない。
正体不明の寂しさと哀しさと、生きていることの疲れ。
それらが積み重なって、自分でも知らないうちに死への憧れが心を支配していた。
どうして、僕は生きているのだろう。
何のために、息をしている。
分からない。
分からない。
考えるのも面倒になったので、死のうと思った。
ただそれだけのことだ。
普通に生きることなら、人前ではできた。
皆と同じように話して、授業を受けて、家に帰って寝る。
それくらいのことはできていたけれど、何かが足りない、ずっとそう思っていた。
手を伸ばせばそこにあるものが、気付いた時にはもう遅くて、大切なものは零れ落ちていって、会いたい人にはもう会えない。
そんな世界なら、僕はもういらない。
底なしの孤独感。
それだけだ。僕に残っているものは。
お母さんはよく言っていた。
「貴方の命は助けてもらったからあるの、だから精一杯生きなきゃ駄目」
そんなことを律儀に守っていた時もあったけれど、もうどうでもいい。
だって、そんなことを言ったお母さんはもういない。
いつの間にか変わっていた街並みに目を向けてみる。
結構遠くまで来たようだ。
車のナビに目を落とすと、午前二時半と表示されていた。
「おい少年。しょげるなよ」
僕は苛々した。
おじさんに何が分かる。
そんな心もこもってない言葉で、励まされてたまるものか。
「何でそんなこと言うの」
「何でって、いやぁ」
「ほら。目的も理由もないんでしょ、だったらそんなこと言わないで」
「え?うーん…」
言葉を濁し、おじさんは黙り込んでしまった。
最初のコメントを投稿しよう!