First note 返り咲き

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「まあいい、とりあえずどうしたら  いい。今の自分のデスクに向かえば  いいのか?」 項垂れたような子供っぽい仕草をしながら春樹が言う。 「いいえ、直接企画課の西内さんまで  連れてきてくださいって言われて  ますよん。」 言葉を発するごとに、彼を覗き込んで話しかけてくる沢井。かまってほしいのか、もしくは何かこの先起こる展開に期待しているのか?気まぐれなところは、まるで猫のようだ。  春樹の勤める会社は、AIの技術を研究し商品化に繋げている、いわゆる先進電子工学の企画開発、販売促進を一社で手がけている大手上場企業である。一つの企画が潰れるということは、簡単なことでは済まない。今までその技術に手がけてきた会社の財産、人件費、諸経費もろもろが、全て無駄に終わるということだ。当時商品自体には何のトラブルもなく商品化に至る筈だったのに、2年経った今になっても、その話は一向に持ち上がって来ない。そう考えると、今の企画課商品開発部の人選に問題があるのか。もしくは、春樹の知らないところでチップに改良でも加えたのか。いずれにしても、実際に開発者本人である春樹自身の目でサンプルを見るまでは、何も分からなかった。
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