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二人は電車を乗り継ぎ、40分ほどかけて会社の前までたどり着いた。大通りに面した商業区は、大手企業のビルディング街となっているが、高速道路、埠頭なども多い。周辺は名のある企業の自社ビルがひしめき合う商業製品誕生のいわゆる激戦区だ。新製品の情報など販売前に世に知られようものならば、いつ足元を掬われてもおかしくはない世界だ。
「よりによって、まさか、な。」
春樹は最悪なケースを想像したが、憶測を並べ立ててもなんの解決にもならないため、考えるのをやめた。
二人は守衛室前に立ち、指紋認証を済ませて改札口のようなゲートを入る、続いて正面には高い壁状のゲートがあり、液晶画面に自分の顔が写り込む。ここでは網膜認証をする。更に進むと、ようやく正門にたどり着くが、ここでもスマートフォンによりアプリ認証をして要約内部に入ることができるのだ。この会社、働くものは警備員だろうと、清掃員だろうと、皆同じ条件をクリアしなければ立ち入ることすらできないのだ。エントランスを抜けると、ロビー中央には大きな地球儀がある。その周りを、IEEの文字が回転帯に沿ってCGとして回っている。岩井エレクトリックエンジニアリングの略称だ。創設者岩井重利は、8年ほど前に病気ですでに他界しており、今はその長男の岩井昌文が2代目統括を担っている。
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