First note 返り咲き

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長い廊下も、要約行き止まりに差し掛かる。正面にはエレベーターのエントランス。向かって左側にはカフェテラス、右側にはコンビニエンスストアがある。二人はまっすぐエレベーターへ進む。エレベーターには押しボタンはない。自分の持つスマホを画面に触れるだけだ。アプリの中に情報があり、その社員によって、承認されている階層のみがスマホ画面に表示されるシステムだ。だがそれだけではない。企画課の開発部は、誰でも立ち入れる場所ではない。企画課以外の部署でも、中には他部署禁制となっている課があるため、スマホアプリ式のエレベーターは、近年珍しい代物ではなくなってきた。  流石にここまで来ると、春樹は緊張の色を隠せなくなって来た。何せ2年もブランクのある部所への返り咲きとなるかもしれない日だ。エレベーターの室内にいる間、彼はソワソワして仕方がない。 「係長も緊張とかするんですね!  かわいいですぅ♡」 人の弱みに付け込んで、呑気なものだ。そう思ったのと同時に、春樹はある事に気づいた。 「って、お前!このエレベーター  乗っちゃ駄目じゃん!」 気づいても、時すでに遅し。部外者を連れて行くなど、出社前にして復帰の夢が崩れた。もう終わりだ。春樹はそう思った。
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