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庶務課のまま終われればまだいい。首だけは何が何でも避けたい春樹だった。そうこうしているうちに、目的の37階に到着した。待ち望んでいたこの瞬間。2年も経った今ならば、当時よりはまともな仕事は出来そうだが。それにはまず、連れてきてしまった沢井を何処かに逃さなくてはいけない。そう思った矢先のことだ。
「あっ、いたいたぁ!西内室長!
坂本係長連れてきましたよぉ♡」
(こいつはあほなのか…。)
すべてが白紙に戻った。春樹はそう思った。しかし、予想だにしないことが起こった。西内と沢井が、普通に会話を続けている。それどころか、周りの誰もその光景に反論してこない。気づいていないのか?そんな訳がない。少なくとも会話をしている西内は指摘してこなければおかしい。春樹は恐る恐る西内に歩み寄る。
「おぉ、坂本さん!めっちゃ心配して
ましたよ。体の具合どうっすか?」
西内は、もともとは春樹の部下だった。当時の開発部は今よりも活気があり、製品化に向けた各々の取り組みもレベルが高く、いい意味で競い合っていた。
「って、そんなことより、沢井だよ!勝手にエレベーター乗り込んで来ちゃってさ!」
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