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(俺はいったい、この先何を糧に
して生きていけばいいんだ…。)
虚しい思考をいくら巡り返しても、答えなど出るはずもない。ただひたすらに、彼女との結婚のためにここまで仕事にも没頭できていたのに。そんな春樹が、今となってはまるで別人に。当時職場の誰よりも有能と言われていた彼は、企画課からも異動を余儀なくされ、庶務課の係長と成り下がっていた。仕事は、一日ほぼ雑用、シュレッダー、人事異動の世話係などが主立っていた。2年前の自身の人事異動の際には、数人の同僚が反対してくれていたのだが、それも昔のこと。今はすれ違っても誰一人相手にするものはいなかった。それでも春樹が今の会社を辞めずに続けているのには訳があった。綾音と知り合ったのも、同じ社内だったのである。彼女との思い出から抜け出すことのできない彼は、その馴れ初めとなった会社自体、辞めるわけには行かなかったのだ。たとえ左遷されたとしても、しがみつく必要があったのだ。そうはいっても、ここまで職務内容が落ち込んでしまった手前、春樹自身どう挽回していいかすら、わからずにいた。それどころか、体調不良が長引き、仕事を休む日々も増えていた。
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