First note 返り咲き

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「仕方ない、出社するか‥。」 そう呟くなり、春樹は持っていたペットボトルをゴミ箱へ投げ入れ、寝室へと移動する。体は鉛のように重たい。だが、それでも会社に見限られて、解雇されるわけには行かなかった。不順な思考だということくらい、彼自身が一番分かっている。しかし、春樹の精神を保つための方法は、彼自身、会社への依存をおいて他に方法が思いつかなかったのである。今回は1週間ぶりの出社だ。仕事は溜まりに溜まっているだろう。部下からも、白い目で見られるだろうと覚悟の上だ。時間はかかれどなんとかスーツに着替え終え、洗面所へ向かう。 「なんつう情けない顔だ‥。」 やつれて頭もボサボサ、髭は鼻も顎下も伸び切っていた。顔を洗い、蒸しタオルで顔を覆い、髭を剃る。髪を整え、かっちりと整髪料で整えた。すると、まったくの別人のような好青年が姿を表した。パリッと決まった紺色のスーツ。ベージュと黒のストライプのネクタイ。短髪で両サイドから前方へと立ち上げた、かっちりとしたヘアスタイル。仕事ができる男の雰囲気が滲み出ていた。
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