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瑛次とは大学で知り合った。
告白されて付き合い始めたのは3年になってからだった。
お互い別のゼミに入りなかなか会えなかったけれど、瑛次はマメに連絡をくれた。
優しい人だった。
好きだなぁ…って思ってた。
4年の秋、お互い就職が決まってよく遊びに行く様になった。
一緒にいると楽しかった。
もうすぐ本格的な冬になるねって話していた頃、
瑛次が急に死んじゃった。
道路に飛び出して…死んじゃった。
瑛次に突き飛ばされた男の子の泣き声が、うるさかった。
頭から流れる血を止めてあげる事も、微かに動く手を握ってあげる事も、名前を呼んであげる事さえもできなくて…。
何一つできなくて…。
瑛次の時間が止まって、私だけが卒業して、就職した。
ごめんね…。ごめん。
救命講習に出会った時、少し気持ちが救われた気がした。
あの日、瑛次にしてあげられなかった事を…できる人になりたいと思った。
できる人にならなければと思った。
それが、瑛次への懺悔。
何もしてあげられなかった。
「好きだよ」って一度も言ってあげられないままだった。
だから、私はもう恋愛はしない。
そう決めた。決めてた…。
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