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仕事から帰ると、部屋の電気が着いておらず、いつも居るはずのリビングにも誰も居ない
ただ、部屋のあちこちにほんのり甘く良い香りが漂ってくる
「雪兎、また我慢させちゃったみたいだな…」
まだ遠慮がちな恋人を早く抱きしめてやりたいが、発情期の始まったΩを驚かせるのは良くないと思い、静かに寝室に向かった
他の部屋よりも一層濃厚な甘い香りについ顔が緩んでしまう
ベッドの上で膨らむシーツを愛おしげに抱きしめ、顔を埋めて匂いを胸いっぱいに吸い込む
「ただいま、雪兎。発情期が来ちゃったのか。連絡してくれて良かったのに」
シーツの中から不安げな表情で顔を覗かせる愛しい人を見て、更に笑みが溢れる
「雪兎のフェロモンで部屋が満たされてる。早く雪兎をいっぱい愛してあげたくなるよ」
フェロモンのコトを言うと、今にも泣き出しそうな顔をし、頸を押さえている
「ごめんなさい…僕の、フェロモン…臭いから…嫌な思いさせて、ごめんなさい…」
言い方が悪かったせいで、また悲しい顔をさせてしまった
俺には堪らなく良い香りなのに、雪兎は自分の香りを嫌っている
フェロモンのコトを話すといつも頸を抑えて謝ってくる
「ごめん、雪兎のフェロモンはすごく甘くて良い香りだから…だから、もっと俺を求めて出していいよ」
雪兎の手を取り、頬や首に口付けをしていく
白く簡単に折れてしまいそうな細い首に噛み付きたくなる
「雪兎、愛してるよ。早く、雪兎を満たしてあげたい」
おずおずとシーツを開いて迎え入れてくれる姿に愛しさが募るも、彼の周りにはシーツ以外何も見当たらず、内心寂しく感じる
今日も、巣は作ってくれてないか...
ベッドの周りを見ても、自分の服は一切なく、今回も巣作りはして貰えなかったのだと、寂しさを口に出せずにいた
「雪兎、欲しいモノとかして欲しいことある?雪兎が安心出来るなら、なんでも用意するよ」
小さく首を横に振る彼に更に寂しさが募る
まだ、足りないのだろうか…
一緒に居れない時に発情期になってしまったから…
雪兎のコトを考えていると、服の裾を少しだけ摘まれ
「士郎さんが居てくれたら、何もいらない。ギュッて、して…士郎さんにいっぱい触れて欲しい…」
俯いて恥ずかしそうに言う雪兎に愛しさが溢れる
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