どっちつかず

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 テルヤはまたこまめにメッセージをくれるようになった。結局、ブロックを解除してしまった。あれから何度も電話とメールが来て、根負けしてしまったから。  あんなに忙しそうなのに、いつ暇があるんだろう。ちょっと時間ができたら送ってくれているんだろうな。気持ちは嬉しいけど、無理をしないでほしいと思ってしまう。  テルヤはまたやり直そうと言ってくれているけど、私の気持ちは宙ぶらりんだ。テルヤを嫌いにはなれない。今でも好きだと思う。  だけど、側にいてくれない人よりも、側にいてくれる人の方が嬉しいことだってある。もう私はテルヤを待つことに疲れてしまった。  やっと自分の人生を再開できると思ったら、こうやってまたテルヤと繋がりができた。彼との関係をどうするのか決めないと前には進めないようになってるのかな。  握手会の時は会えて嬉しかった。だけど、遠い人になってしまった、ということも実感した。彼はすでに私だけのものではないし、そうであってはいけない人だ。  一ファンとして彼を見ている方が幸せな気がする。そこには余計な期待を持つ必要がないから。  アキトシは静かに待ってくれている。私が答えを出すのを。彼の作ってくれるお酒は、いつも私を励まし、元気づけてくれた。変わらずにずっとそこにいてくれる人。そういう人を好きになりたい。  きっとテルヤと二人で話せば、どれだけ離れてしまったのかをお互いに確認できると思う。  そしたら気持ちが吹っ切れる。それをしに行かなきゃ。  仕事帰りにバーに来たハナに先日確認をした。 「ハナが韓国に行く日っていつ? ハナが来ないなら僕も休み取って久々に実家に帰ろうと思って」 「そうなんだ。えっとね、六月十一、十二日で行ってくるよ。お土産買ってくるね。アキトシの実家ってどこなの?」  やはりテルヤさんが韓国にいる時と重なっている。何とでも連絡の取りようはあるからな。だからと言って、会いに行くなよ、とか言える関係じゃないのは半年前と変わらない。 「ヒントは花がきれいなところ」 「どこ? いっぱいあってわかんないかも」 「帰ってきたら連れて行ってあげるよ」 「ほんと?」  ねえ、君は僕の家族に会う気はある? 僕は君とずっと一緒にいたいと思ってるけど。 「うん。お土産は何がいいかな。考えとくよ」  僕は作ったドリンクを提供しに行った。
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