僕の宝物

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 アキトシと暮らしたら、こんな感じになるんだろうな。  私が仕事から帰る時は彼は出勤。私が出勤するときは彼が寝てる。  それでも一緒に側にいられるなら離れてるよりもずっといい。同じ場所に帰ってくるんだもの。  目が覚めてしまった私は、どういう風に話を切り出すのかを考えていた。  まず、病院に行かなくては。今日は朝一の予約だから、アキトシが寝ている間に行って来よう。  着替えて朝食の準備をして、彼に書き置きをした。 ”病院に行ってくるね。近くだから、お昼までには戻ります。ご飯食べてて”  受診の結果、やっぱり妊娠している、ということだった。 「見えますか? ピコピコ動いているのが心臓です」  エコーで小さな丸い影を見せられた。 「正常妊娠なので出産は可能です。胎児へのピルの影響は認められないと言われています。もし、中絶されるのであれば、一日も早い方が体への負担はありません」  医師がよどみなく伝えてくる、今の私の現実。 「先生、もし産むとしたら、一人でも大丈夫でしょうか」  少し考えた後に医師は口を開いた。 「産後はしばらく動かない方が良いし、赤ちゃんの世話で精一杯です。可能であれば、ご結婚されたほうがいいですし、親や周りの人の助けは必要です。たった一人で、というのは公的な支援を受けてもかなり心身に負担が大きいと思って下さい」 「出産で命を落とす時代もあったんです。誰かの支援は必ずあったほうがいい」  ……そんなに大変なものなんだ。私は自分の考えが甘かったことを知った。 「わかりました。よく考えてみます」 「もし出産を考えておられるなら」 とエコーの写真と共に出産についての小冊子を渡された。今日はチヒロさんはいないようで、医師についている看護師さんは別の人だった。  相談してみよう。チヒロさんにも。  帰りに本屋に寄った。何冊か出産に関する本を見て、試しに一冊だけ買った。お腹が空くとすごく気分が悪くなる。カバンの中にあったキャンディーを舐めて何とかしのぎながら、アキトシが待つ部屋に帰った。  ガチャ、とドアの鍵が開く音で目が覚めた。  ハナはどこかに行ってたんだろうか。時計を見ると十一時を過ぎていた。水を飲もうとキッチンに行くとテーブルに書き置きがある。  病院? どこか悪いんだろうか。そう思っているとハナが部屋に入ってきた。 「おかえり」 「アキトシ、起きてたの?」 「今起きたとこ。どうしたの病院って」 「ご飯食べよ? 私もお腹空いた」  ハナは質問に答えずに料理を始めた。 「ハナ、ちゃんと教えてくれよ、何か悩んでるなら」 「……アキトシには隠し事ってできないようになってるのかな」  彼女が肩をすくめて苦笑いする。
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