熱々で染み渡る手のひら

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熱々で染み渡る手のひら

「ダーシュレイ、見て!巨大な雪のウサギがいるわ!」 「はは、本当だ可愛いな。」  数週間後、オニリーヌはダーシュレイと共に彼の生まれ故郷、ドウホッカイの町に遊びに来ていた。 この町は雪がとても降ることで有名で、一年を通して気温が低く、とても涼しく昆布達を問わず多くの人々が観光として訪れる町だ。昆布の生産地としても有名である。 「ごめんなさい、ダーシュレイ…私のために学校を休ませてしまって。」 「構わない、課題はもう済ませていたし、父上からもコメ族との祭りに参加するために帰るよう言われていたからな。」 「あら…そうなのね…」 「ああ、だから俺のことは気にするな。」 「ありがとう…。」  ダーシュレイの優しさに申し訳なさを感じながらオニリーヌはそう礼を言った。 そして冷たい風に頬を撫でられながらジーアワ島ではなかなか見ない一面真っ白な雪の世界を眺める。 「とっても綺麗…素敵、真っ白で清らかで美しいわ…連れてきてくれてありがとう。今度行く時は私がジーアワ島を案内するわ。」 「今度…また俺と会ってくれるのか?」 「あっ…!え、えっと…その、あ、貴方が…望むのなら、ね?」 「……そうか。」  オニリーヌが顔を赤くしながら目を逸らして言うと、ダーシュレイは彼女の可愛さににやけそうになる口元を抑えた。 「そ、そろそろ戻らないかしら!…その、さ、寒くなってきたわ!」 「ああ、そうだな…誰かさんの顔も真っ赤になってるし。」 「えっ…?」 「はは、ほら行くぞ、雪が積もってて歩きにくいから俺の手握ってろ。」 「わっ。」 「離すなよ。」 「はわわ…。」  …手、手を握ってしまったわ!  オニリーヌはダーシュレイの手を取り、慣れない雪の中を歩いていく。温度は低く氷の中にいるのか疑いたくなるほど寒いのに、彼の手と自分の体が熱い。 「手小さいな、裁縫の練習をしている時から想っていたが、できたてのつららみたいだ。」 「さ、裁縫…そのことは忘れてほしいわ、私、裁縫が下手なんですもの。」 「そんなことはない、ちゃんとハンカチに綺麗な刺繍ができていたじゃないか。」 「あ、あれは…1ヶ月経ってやっとできたものなの!他の子達より遅いし…何よりあれを作るのに沢山失敗してしまったわ。」 「…いいじゃないか、失敗したって。」 「えっ。」 「確かに失敗せずに一度でやり切ることはすごい才能だと思う、 だが、1ヶ月間めげずに頑張り続けたことも、 同じくらい素晴らしいことだ …前々から思っていたがそんなに自分を否定するな、 君のことを好きでたまらない俺がここにいるんだから。」 「っ!?」  彼の熱い言葉にオニリーヌは思わず硬直した。トリムネの時は自分がひたすら愛をぶつけていたのに、逆に愛をぶつけられる立場になってしまった困惑で胸が苦しくなる。 そして、次第に彼女の中でトリムネの存在が解けた雪のように薄くなっていく。 …私、もしかしてダーシュレイのことを…。 そう感じた、次の瞬間だった。 「久しいな、オニリーヌ。」 「お前は…!」 「トリムネ様…!?」
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