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つゆ知らずな甘さ
「本当に今回はうちの皇太子殿下が
すみませんでした…今後の国のことは僕達鶏肉族でなんとかいたします…。」
「ああ、それに加えて、あの男に二度と彼女の前に現れるんじゃないと伝えておいてくれ。」
「ちょっと、ダーシュレイ!」
その日の夜、説明を終えたトリモモはトリムネと共に帰ることになった。
説明によると、トリムネはオニリーヌから常に愛されたことにより、これだけ女に好かれるんだから自分は他の女でも簡単に落とせるのでは?と調子に乗ったあまり、オニリーヌの親友であるタマゴーラに手を出したそうだ。
タマゴーラはオニリーヌとは違って幼く不思議な発言をよくする性格だったため、予想外の言動がおもしろく、次第に献身的で賢明なオニリーヌより魅力を感じるようになった、そしてその結果、オニリーヌの婚約を破棄し、タマゴーラを新しい婚約者にした。
それからというもの、邪魔な政略の結婚相手がいなくなり、タマゴーラと円満な生活を送れると胸を膨らませたトリムネであったが、
タマゴーラはオニリーヌがいなくなった途端に豹変し、立場をわきまえず無礼な発言をするようになり、ある時には自分の父親である国王を老耄呼ばわりしたことで周囲から妻とすることへの反対の声が上がった。
さらに、オニリーヌが思った以上に学園の生徒から慕われていたため、タマゴーラとトリムネが一気に孤立してしまい、加えて、タマゴーラはオニリーヌの悪口を言ったことでオニリーヌの友人であったクラスメイトと言い合いになってしまい、敵を多く作ってしまった。その結果、ついに彼女は学校に来ず、寮の自室に引きこもってしまったのだ。
こうして親、学校から評判が悪くなり、婚約者であるタマゴーラも孤立してしまったトリムネは、なんとかこの状況を挽回しようと国王にオニリーヌに今回のことを詫びてこちらに戻ってきてもらい、名誉挽回に協力してもらうようにすると話しドウホッカイへ降り立った。
そして、今に至るというわけだ。
「それなのにあんな偉そうなことを…。」
「あの人のことです…皇太子ってプライドが謝るという行為を許さなかったんでしょう…
本当に馬鹿なチキン野郎です…。」
「あの、タマゴーラは私についてどんな悪口を…?」
「親子丼に玉ねぎがいない方が鶏肉のジューシーさがでるから存在自体迷惑…と言われたそうです。」
「そんな…タマゴーラ…仲良くしてたのに、酷い、そんなこと言う子じゃなかったのに…どうか、私の友達たちに私はもう元気だから心配しないで、とお伝えください。」
「かしこまりました、オニリーヌ様
…では、私達はこれにて失礼いたします。」
「遭難しないようにな。」
「さようなら、お気をつけて。」
トリモモは丁寧なお辞儀をして王子がいるであろうヘリに向かって歩いて行った。彼の姿が見えなくなったころ、ダーシュレイが口を開く。
「よかったのか?トリムネを泣かせに行かなくて。」
「いいの、さっき謝ってくれたじゃない。」
「甘いな…。」
「なんで頬を膨らませてるの?」
「だって、お前のこと散々叩いたりしてただろ、俺としては許せたもんじゃない。」
ダーシュレイがほおを膨らませたまま、腕を組み不服そうな顔をする。どこか幼なげなその表情が可愛らしく見えてオニリーヌはくすっと笑った。
「どうかそんなに怒らないで、もう私あの男には興味がないんだから、
…ダーシュレイだけが大好きよ。」
腕に抱きつきながら上目遣いでダーシュレイに言うと、彼は顔を真っ赤にさせオニリーヌを抱きしめた。
「全く…もう、かわいいなぁ、君は…。」
「貴方も大概甘いわね。」
「たまねぎには負けるさ。」
おしまい。
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